日本の同棲と非法律婚カップル

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事実婚の動機

実際、日本の同棲、事実婚の実態はどうなっているのか。「出生動向調査」(1987~97)によると、欧米諸国に比べてかなり低いレベルではあるものの、男子が3.7%から5.5%に、女子が3.2%から5.8%に上昇したことがわかっている。この点について、善積(1997)は、男女各約300のアンケート調査とインタビュー調査を行い、興味深い結果を出している。

善積は、継続的に性関係がある男女を「非法律婚カップル」と呼び、その中にも、届け出をしていないだけで当事者に結婚しているという意識のある場合(事実婚)と、結婚しているという意識の全くない場合をあげている。彼らの非法律婚の選択の最も大きな動機は、「夫婦別姓を通すため」「戸籍制度に反対。(女性は9割近く、男性でも6割以上)、次に多い項目は、女性では「性関係はプライベートなことなので、国家に届ける必要を感じない」(7割)、「性役割分担から解放」(6割)と続く。一方、男性は「相手の非婚の生き方を尊重」となっている。そして彼らは、非法律婚カップルの利点として、現代の結婚に付随する戸籍制度や、男女の役割分業意識にとらわれない点、相手の「家」から解放され、「嫁」的役割を期待されず、距離をもって個人として交流できる点などをあげている。個人を尊重し、多様な家族のあり方を認めようとしている家族観が表れている。

高い男女平等志向

さらに注目したいのは、善積(1997)による法律婚カップル(1990年、神戸市の684組の夫婦)と、非法律婚カップルの家族を比較した生活実態についての研究である。非法律婚カップルは法律婚カップルに比べて男女平等志向が強く、女性は職業をもち、男性は家事。育児にかかわる割合が高い。たとえば家事の分担について、法律婚カップルは86%で「主として女性」がになっているのに対して、非法律婚カップルでは「主として女性」か「同じくらい」が半数強を占めた。

生活費の負担についても、法律婚カップルの90%が「主として男性」「どちらかというと男性」であったが、非法律婚カップルは、「同じくらい」が40%を占めている。また、家計分担のあり方も法律婚カップルより個別化の傾向が強い。「男は仕事、女は家事や育児」という性別役割分業観を超えて家庭生活を実践することは容易ではない。非法律婚の人たちは、時にはパートナーと喧嘩しながら、またストレスを感じながらも努力し、伝統的な性別役割分業形態にとらわれず、男女平等をめざし、自分たちの状況に応じた形の家事の遂行、家計の組織化を試みているのである。

非法律婚に法的な拘束力がないため、カップル関係の維持には、情緒的結びつきがきわめて重要な役割を果たしている。本人たちの自覚のもとに、日常性に流されずに親密さを維持していくという緊張感をもったカップルである。だからこそ、公平性と個人を尊重した関係が築けるのであろうか。男女平等志向で、個々が経済的に自立している非法律婚カップルの示すパートナーシップは、現在の日本が模索している結婚モデルの1つを示唆しているのかもしれない。



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